「やろうと思えばなんでもできるし、見えない先が楽しみ」河本結インタビュー

彼女の描く上昇カーブは、われわれの想像の先を行く。プロ1年目、2年目に次々と、より大きなものを掴みとってきた河本結が、3年目でアメリカへと渡る。果たして、どこまで進んでいくのか。可能性は底知れない。

「未来を切り拓く」という言葉を、彼女はまさに体現している。プロ1年目の2018年にステップ・アップ・ツアーで賞金女王になると、2019年はレギュラーツアーにフル参戦して、初優勝。さらに、迎える2020年シーズンは米国LPGAツアーへと打って出る。
「ルーキーイヤーが、3年続くんですよね」と、河本結は笑った。かなり珍しい経歴と言えそうだ。

2019年シーズンのハイライトの一つは、先述のとおり、レギュラーツアーでの勝利だ。「第7回アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI」の初日を単独2位で飛び出すと、2日目で2位に4打差の首位に立ち、最終的に5打差をつけての強い勝ち方だった。
「4戦目での優勝というのは、早かったと思いますね。本当にあっという間でした。うれしかったです。こうやってプレーすればいいんだと思いましたし、優勝した後は、また次に勝ちたいという思いが強くなりました。意外とすぐに気持ちも切り替わりましたね」

その後も好調は持続され、圧巻だったのは5月から7月にかけての戦いぶりだ。「ほけんの窓口レディース」から「ニッポンハムレディスクラシック」までの8戦中、7戦でトップ10入り。しかも、そのなかでトップ3は5回もあった。

ただ、だからこその悔しさもある。
「トップ10は頑張ったと言えるんですけど、2位と3位タイを4週続けたときもあったので、そのときに勝てていたらなという思いがあります。でも、勝てなかったからこそ学べたこともすごく大きかったです。いい経験になったというのは良いまとめ方をしすぎなのかもしれませんが、すごく収穫がありました。すべての試合で、新しい経験でしたね」

シーズンを通しての成績は、優勝1回、トップ10が11回、予選落ちはわずかに3回で、賞金ランキング6位。初のフル参戦と考えれば、堂々たるものだ。しかし、ここでも大満足とまではいかない。
「賞金ランキングは5位、平均ストロークは70点代を目指していました。それに届かった(平均ストロークは71.0742)のがちょっと悔しいです」

一方で、優勝以外にも喜びを感じられたシーズンだった。あらためてプロゴルファーは、「本当に幸せな職業」だと思った。
「すごく過酷なスポーツですけど、たくさんのギャラリーさんがわざわざ来てくださいますし、いろいろな方がすごくサポートしてくださる。本当にみなさんの力で大会ができていて、そのなかで自分の好きなことを仕事にできているという幸せを、ものすごく感じました。

いろんな選手がいて、いろんなプレースタイルがあるなかで、自分を見失いかけたときもありました。でも、自分のいままでのプレースタイル、戦い方とか、そういったものを見て応援してくださる方のために、自分らしさ、自分らしいプレーを届けなければいけないなというのは、いまだから振り返って言えることですね」

数えきれない不安を吹き飛ばしてくれた一言

さて、彼女はこうしてレギュラーツアーでの初年度を終えたわけだが、胸の内では別の道への思いも温めていた。米国LPGAツアーのQT受験だ。世界ランキング75位以内ならば3段階のうちのファイナル、「Qシリーズ」から出られるのだが、ボーダーラインを楽々とクリアした。

「本当の自分の目標は23歳で挑戦するというものだったのですが、2年早まりました。QTを受けるというのはけっこう前から決めていて、アメリカで戦っていたいろんな先輩方からも、行くなら早いうちに行ったほうがいいと、背中を押してもらう部分も大きかったです。自分の年齢で言うのもおかしいのですが、同じ時間は二度と流れてこないし、人生一回きりです。自分がやりたいことに目標を持って、最後まで努力できるその楽しさというのが本当の幸せだと2019年シーズンで感じたので、やれるときにというか、一瞬一瞬を大事にしたい、悔いなく生きたいと思ったので決断しました」

10月にパインハーストで行われた、長丁場を戦い抜き、結果は9アンダーの9位タイ。しっかりと2020年の出場権を掴みとった。

「8日間の予選会は長かったですよ。でも、長いなかでもアメリカの良さというのを感じました。なんだか時間がゆったり流れていて、本当にフリーな感じがして、自分に合っているなというか、ここでプレーしたいなと思いました」
ただ興味深いことに、突破した直後から、急に不安が襲ってきたのだそうだ。

「通る前までは、『よし、私、がんばろう』みたいな感じだったんですけど、通った瞬間に、『ヤバい』と思って……。ステップ・アップ・ツアーを戦って、レギュラーツアーを戦って、そこからすぐにアメリカなので、自分の実力で通用するのかと、すごく不安になりました」
プレー以外の現実も、頭のなかに次々と降りかかってきた。

「向こうに行くのには金銭的にものすごくかかりますし、言葉とか環境が変わるなかでやっていけるのかという不安もありました。どうやって生活するのか、どうやって準備すればいいのか……。本当に数えきれない不安があって、不安だらけでしたね」
しかしいまは、「もう、あんなに不安に駆られることはない」と言う。目の前にあった霧を一気に晴らしてくれたのは、いちばん近くで見守る人の言葉だった。

「プロゴルファーは、賞金で順位を争うというのもあって、お金を稼ぐのが幸せというふうに見えがちですが、家族で話し合ったときに母から、『お金がすべてじゃないし、やっぱり時間や幸せはお金じゃ買えないよ』と言われたんです。それで、私の本当にやりたいことは、アメリカに行って精いっぱいゴルフをして、世界一になることだと再認識できました。そうなったらもうワクワクというか、なるようになるし、やろうと思えばなんでもできるし、見えない先が楽しみというか……」

余計な迷いも気負いもなく、彼女は新たな挑戦へと向かう。

「もちろん目標はありますけど、自分らしさを忘れず、最後まで走り抜きたいですね。日本のツアーも出るので、ずっとアメリカに行っているわけではないのですが、年間を通し、私にしかできないゴルフスタイルで、日本でも世界でも戦い抜きたい。これしかないですね」

プロ3年目、今度はどんな未来を切り拓いて見せてくれるだろうか。河本結の2020年シーズンが、もうすぐ始まる。

河本結 ツアー初優勝! ルーキーイヤーでの勝利!

<2019年 スタッフプレーヤー インタビュー>
「一生懸命プレーして、元気や感動を与えられるようになりたい」河本結
「アメリカに行くかどうか、いま本当に悩んでいます」丸山茂樹
「シニアは楽しみだけど、レギュラーツアーも諦めてはいない」深堀圭一郎
「2019年は、いままでにないくらい大きな年になる」石川遼
「優勝はしたけれど、2018年は2018年。危機感を持ってやりたい」重永亜斗夢
「いまは、『もう、やるしかない』という気持ちが大きいです」藤田光里
「いろいろな経験をしたからこそ、2019年は一味も二味もいいものを見せたい」柏原明日架
「生まれ育った広島に、少しでも元気や勇気を届けたい」佐伯三貴
「ゴルフが好きだということを、最近あらためて気づかされています」上田桃子
「キャロウェイと契約できてうれしいですし、もっと頑張らないといけない」三浦桃香