「優勝はしたけれど、2018年は2018年。危機感を持ってやりたい」重永亜斗夢インタビュー

スタッフプレーヤーインタビュー 重永亜斗夢

「優勝はしたけれど、2018年は2018年。危機感を持ってやりたい」

2018年、ついに優勝をつかんだ。賞金ランキングも、自己ベストの位置へと駆け上がった。しかし、重永亜斗夢が浮かれることはない。毎年が勝負と自らを戒めながら、1年1年にベストを尽くしていく。

 ここ数年、日本のキャロウェイ・スタッフプレーヤーからツアー優勝者が出なかったシーズンはない。2018年も流れは続いた。途切れさせなかったのは、重永亜斗夢。2017年までの複数人と違って、2018年は、重永がスタッフプレーヤーでただ1人のウィナーだった。
「それがちょっと、うれしいですよね。優勝は、僕には縁がないだろうなとも思っていましたし……」
 控えめに笑みを浮かべながら、彼は続けた。
「なんか実感があるようで、ないようで、それはいまも続いています。でも、勝ったんだなと」
 念願の初優勝は、シーズンに入って、いきなりやってきた。過去にも好成績を残している国内開幕戦、東建ホームメイトカップ。同じくスタッフプレーヤーの石川遼、永久シードの片山晋呉という強豪を4打差の2位タイに従えて、3日目に単独トップとなると、その2人と最終組で回った最終日も、動じることなく、首位の座をしっかりと守り切った。
「3月まではゴルフの調子が上がっておらず、自分のなかでもパッとしない感じでした。でも、そんななか、ローカル競技で2戦続けて優勝したんです。2戦目では、2日目にコースレコードもつくったくらいで。その流れや経験を、東建ホームメイトカップにすごく生かせた感じでした。緊張してはいるけれど、優勝を意識してというわけでもなく、自然と自分のゴルフに集中できていた1週間でした」

 2008年のツアープレーヤー転向から、ちょうど10年。最初の1勝までのこの時間は、早かったのだろうか、それとも遅く感じているのだろうか。
「ツアーで勝つことを小さいことから目標にはしてきましたが、実際のところ、“僕なんかが”とずっと思っていましたし、自分のなかで優勝するために足りない部分もわかっていました。そういうことを全部含めて考えると、早かったのかなと思います。ただ、早いにしろ、遅いにしろ、何より、勝ったことで全然違ってくるということがわかりました。勝てたことによって、また勝ちたいなという欲が芽生えてきたんです。勝てなかったら、そういう欲も出てこなかっただろうし、向上心とかいったものも足りなかっただろうと思います。これからのゴルフ人生にとってもそうですし、いろいろな面でプラスになることが多かったなと思いますね。それは、優勝しないとわからないことだと思います」
 その「欲」を示すように、2018年はその後も優勝のチャンスがあった。トップ10も計5回(これまでのベストは2016年、2017年の4回)を数えた。なかでもフジサンケイクラシックは、3日目にトップと5打差の2位タイにつけ、最終日を最終組で回った。
「最終的にトップとは打数が離れて(6打差)、単独3位でしたが、僕も最終日に4アンダーといいゴルフをして、優勝争いをする存在でいられました。2018年のなかでは、初優勝の次にいいゴルフができたかなと思います。これまでだったら、もっと順位を落としていたかもしれません。でも2018年は、他の試合においても、悪いなかでトップ10に収まったり、悪いなかでも我慢ができたりということが多い1年でした。それは成長した部分だと思います。考え方もそうですし、ゴルフの仕方もそうですし、悪いなりにどういうゴルフをしていったらいいのかといったことを、すごくうまくできていたのかなというふうに思います。終わってみれば、賞金ランキングもキャリアハイの17位で、優勝もあったし、最終戦(ゴルフ日本シリーズJTカップ)も出られて、ゴルフの面では充実した1年だったと思いますね」

東建ホームメイトカップの連覇を目標にしたい

 一方で、反省すべきところもあった。初優勝後の5戦連続予選落ち。「体調が良くなかった」という面もあるが、ゴルフへの向き合い方と、本来の自分との間にズレも生じていた。
「優勝したことによって、下手なゴルフができないなという意識が出てしまっていました。体調は悪いけれど、なんとかなるだろう。いいゴルフ、カッコいいゴルフを見せなければいけない、と。無理をして、空回りしていましたね。とにかくグリーンの真ん中を狙っていくという、自分のゴルフを見失っていました。でも、ツアー選手権(日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills)で最初の2日間を久しぶりのアンダーパーで回り、予選を通ったことでリセットできました。その後は、自分のゴルフを徹底できたかなと思っています」

 彼の名誉のために書いておくと、「体調が良くなかった」というのは、普通の人とはちょっと違う。やはり、持病である、難病指定の潰瘍性大腸炎が大きく影響する。たとえば、せっかく辿りついた最終戦では、思うようなゴルフができず、トップとは18打離れての28位に終わったが、このころの体重はなんと、「54kgちょっと」しかなかったのだという。
「2018年は上位で戦えていた分、いままで以上に疲れることが多く、体調が悪くなることも多かったですね。JTカップは、体調が悪いままで終わったので、すごく不完全燃焼でした。ただ回っただけ、出ただけで終わってしまいました。でも、やっぱり特別感がありましたね」
 もうすぐ、あの歓喜の瞬間から、ちょうど1年になる。迎える2019年は、初優勝の呪縛からも解き放たれ、自信を胸に、さらに高い場所を求めて……というのが通常のパターンかもしれないが、重永亜斗夢の場合は、ここでも少し異なる。

「自信になったかどうかというのは、どうなんだろう? それはまた、ちょっと違いますね。2018年は2018年ということなんで、また次の年がどうなるかはわかりません。それだけの危機感、毎年毎年が勝負なんだという危機感を持ってやりたいと思います。それがないと気を抜いてしまいますし、頑張れないと思います。僕には病気もあるし、体力的にも弱い部分があって、普通に戦えない分、自分なりのいろいろな組み立てを考えて、また2019年を新たにやりたいなと思いますね」
 決してそれは、消極的なものではない。
「もちろん、2勝目を目指して頑張ります。相性もいいですし、東建ホームメイトカップでの連覇というのを目標にしたいです。それと、優勝による複数年シードもありますが、最低限、賞金シードも取りたいです。長く活躍する選手は、やっぱり賞金シードを続けている人が多いですから」
 新シーズンは、スタートホールでの“ディフェンディングチャンピオン”というコールから始まる。何度でも聞きたくなるような、その心地良い響きは、彼の「欲」をさらに刺激するにちがいない。

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