「いまは、『もう、やるしかない』という気持ちが大きいです」藤田光里インタビュー

スタッフプレーヤーインタビュー 藤田光里

「いまは、『もう、やるしかない』という気持ちが大きいです」

左腕の手術に踏み切った2018年。出場できる試合は限られ、満足の行く成績も残せなかった。ただ、それでも藤田光里のモチベーションは揺らいでいない。むしろ、いままで以上に高まっているようにさえ映る。

 藤田光里の2018年を振り返るなら、何はともあれ、手術のことに触れなくてはいけない。悩まされてきた左腕の痛みを取り除くため、新年明けて間もない1月17日、左ヒジの内側にメスを入れた。
「ほとんど痛みがなくなったのは、夏を過ぎてからですね。それまでは、切ったところの反対側が痺れていたり、ちょっとした衝撃でビクッとなったり……。ケガの痛みではなくて、切ったことによる痛みと違和感が半年くらいはありました。でも、いまはもう大丈夫です。普通にゴルフはできます」
 そんな状態にありながら、彼女は手術後、間もないころから積極的に試合に出た。早くも2月中旬にはグアム知事杯女子ゴルフトーナメントに出場し、レギュラーツアーも3月から8月まで、計11戦に推薦を受けて臨んだ。
「手術したあとは1カ月、クラブを握れなくて、グアム知事杯の1週間前からアプローチ練習を始めて、試合に入ってやっとドライバーが打てるという感じでした。ちょっとまだ痛かったですね。傷口にテープを貼っていなければいけない時期だったので。レギュラーツアーも、ほぼ練習していない状況に近く、とりあえずクラブは握れるといった形で開幕した感じだったので、すごくもったいなかったなという思いがありました」

 良い成績を望むことは、難しかった。グアム知事杯は30位タイで、レギュラーツアー11試合も予選を突破したのは1試合のみ。この結果と、「もったいなかった」という表現を考えると、「なぜ、しっかり治るまで休まなかったのだろうか?」という疑問も出てくる。
「手術が終わった時点で、もう推薦の試合が決まっていたということもありますが、リランキングのことも頭にありました。前半戦で成績を挙げないと、後半戦に出られませんから。結果的に後半戦には出場できませんでしたけれど、それでも私は良かったなと思っています。もったいなかったというのもありますが、いいところまで行けた試合もありましたし、自分はまだゴルフができるということを確かめることもできました」

 2019年前半戦の出場権を懸けたQTも、思いどおりとはいかなかった。10月終わりから11月初めにかけて行われたセカンドを順調に突破し、11月下旬のサードでは、102人出場したA地区において、初日3アンダーの10位タイ発進。しかし最終的に、ファイナルへのボーダーラインとなった通算2アンダーには、1打足りなかった。状況を考えれば、よくここまで行けたとも言える。
「もともと手術をするときに、2018年のQTではなく、2019年のQTのときにピークに持っていけたらと思っていたのですが、そんななかでもセカンドを通過して、サードも惜しくも通れないという位置でした。ファイナルに行けなかったことで、たしかに気持ちは落ち込みましたが、手術から1年経っていないなかでの練習量、準備不足の状況にしては、がんばれたほうなのかなと思っています」
 ケガが治ってきても、なかなか結果はすぐについて来ない。もどかしいシーズンだったことは想像に難くないところだ。ただ、彼女の言葉からは、そんななかでも良かった部分を見いだそうとする姿勢が窺える。昨年のインタビューでは、「2018年は一歩でも前進できたらいいかなと思っています。たとえばケガを治してクリアして、次にちゃんと練習できるように、というふうに、一つひとつやっていけたらいいなと」と語っていたが、まるでその「一つひとつ」ができていたかどうか、あらためて確認作業をしているようでもあった。前向きさは、失われていない。

フェードヒッターになろうと、完全に頭を切り替えました

 一方、こんな時期だからこそ、取り組めたこともあった。それがまた、彼女に新たな火をつけている。代名詞とも言えたドローボールから、フェードボールへのスイッチ。ここ2年ほど彼女は、「打とうと思っていないのにフェードボールが出る癖」が体についてしまっていた。
「それもケガの痛みがあるときは、クラブを充分に振れないと頭で思っているから、『フェードでいいや』と思えていたんです。でも、手術が終わって治ってくると、痛みがないので、もう振れると思ってしまいます。だからドローの意識で構えるのですが、体の癖は変わっておらず、やっぱりフェードが出る。2018年前半戦の試合でも、隣のホールに行ったり、OBを打ったりということがたくさんありました」
 推薦での出場を全部終えたことを区切りとして、彼女は考え方をガラリと変えることにした。

「元に戻そうとするんじゃなくて、新しいことにチャレンジしてみようと思いました。もうフェードヒッターになろうと。出たボールがフェードになっても、自分で嫌な球だと思わずに、『フェアウェイにあればいいんじゃないの』というくらいの頭に変えて、ドローは打たないようにしたんです。そうしたら、まとまってきて良くなっていきました。
いまは、完全に切り替えて練習しています。2018年のうちに気づけて良かったなと思いますし、いいタイミングだったとも思います。たぶん2019年はレギュラーツアーになかなかいけないと思うのですが、それでも試せる試合はたくさんありますし、初心に帰れるチャンスなのかなとも捉えているんです」
 迎える2019年シーズン、たくさんの「試せる試合」とは、自ずとステップ・アップ・ツアーになる。彼女の意欲は高く、目標も明確だ。
「もちろん、1勝できるようにがんばりたいですし、賞金女王を目指してやっていきたいという思いもあります。もしそこまで行けなかったとしても、QTをいい位置から始められるようなところ(注・2019年のQTはファーストとファイナルの2ステージ制で、ステップ・アップ・ツアー賞金ランキング3~10位の選手は、ファーストを経ずにファイナルステージに出場できる。ステップ・アップ・ツアー優勝者も同様)に入りたいですね。レギュラーツアーは、推薦で出させてもらうことがあれば、上位に行くとか成績を残すということ以上に、何か掴むものがある試合を1試合でも多く増やしたいと思います。いまの位置だと、2019年のQTに行かなければいけないことは、ほぼ決まっている状態です。だからレギュラーツアーに戻るためにも、そこに合わせてがんばりたいと思います」

 プロ入り後、もっとも厳しかったと言える1年を越えたから、もはや心に波風が立つこともない。
「ツアーで初優勝した年などは勢いでやっていたところもありましたし、そのあとはケガをして焦ることがすごくありました。でも手術をして気持ちも落ち着いて、いまは失うものがないポジションでもありますし、『あとは、もうやるしかない』という気持ちが大きいですね」
 レギュラーツアーがより注目されるのは当然だが、ステップ・アップ・ツアーからも決して目を離してはいけない。

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