キャロウェイ スペシャル対談 トム・ワトソン × 上田桃子 「練習では、すべてがうまくいく“カギ”を探している」

メジャー優勝8回、PGAツアー39勝を誇るトム・ワトソンが、10月に来日。日本のキャロウェイ・スタッフプレーヤーとの2つのトーク企画が実現しました。第1弾は、上田桃子プロ。テーマは、「自信」です。調子が悪くて自分を信じられないとき、プレーヤーはどうすればいいのでしょうか。アマチュアゴルファーにもきっと役立つ、世界のレジェンドの“金言”を、じっくりとお聞きください。

上田 トムさんといえば、いつも穏やかにプレーされている印象があります。なんだか、ミスをしてもあまり変わらないようなスタイルと言いますか。

ワトソン 顔には出ていないけれど、ミスショットしたときは、じつはすごく怒っているよ(笑)。あなたもゴルフをやっているから、わかると思うけど。

上田 私は気持ちの切り替えがあまり上手じゃないのですが、トムさんはどのようにされているのですか。

ワトソン それは自然なことだよ。やっぱり、何事も自分を信じることができるかどうかじゃないかな。自分を信じて、「やるんだ!」という思いがあれば、気持ちの切り替えもできる。ただ、やっかいなのは、自分を信じられないとき。今日のスイングが、どうもしっくりこなくて、自分を信じることができない、とか。そういうときは、何か自分の得意な分野、武器と言えるものが一つあるといいね。そうすれば、「なんとかできる」という自信が、また芽生えてくる。僕の場合、パッティングとショートゲームにすごく自信があった。その自信をつけるためには、たくさん練習もした。全英オープンでは5回、優勝したけれど、パターとショートゲームが誰よりもうまいという自信があったから勝てたんだ。

上田 私にとっての武器と言えるのはショットです。だから、ショットの調子がいいときは、自信を持ってプレーすることができます。でも、シーズンを通してみると、どうしても波があって、ショットの調子が悪いときもあります。そういうときに、やっぱり不安とか焦りが出てきてしまい、うまくコントロールできないんです。

ワトソン 自分の自信があるところがダメなこともたしかにあるし、感情的にもなってしまうね。ただ、調子が悪くても、どうやったらコースと向き合えるのか、ということを考えるのは、とても重要なんだ。コースをどう攻略するか。ジャック(ニクラス)は、それにとても長けていた。考える力があって、このホールはどうやって攻めるか、どういうショットを打たなければいけないかを、すごく考えてプレーしていた。それをできない人は、同じミスを毎回している。また、ゴルフというゲームに完璧はない。悪いショットも出るし、いいショットも出るし、一喜一憂してしまう。ただ、ある名プレーヤーが、こんなことを言っていたんだ。「1ラウンドで7回のミスは、自分のなかで予測できる」と。ゴルフは予測できないことがいっぱいあるけれど、それくらいミスショットは出てくるもの。私も2009年のターンベリーでの全英オープンで優勝争いをしたとき、残りホールではボギーをこれくらい打ってもいいと、自分を許しながらプレーしていて、結局、最終日は3バーディー、5ボギーでプレーオフになった。「ボギーを打っても、まだ大丈夫、自分のゲームプラン通りだ」と、落ち込まずにやれた。ボギーを叩いたあとは、自分ではそれをどうにもできない。だから、打ったものはしようがないと、気持ちを切り替えていくしかないよね。

それともう一つ、ラウンド中に何かを変えるという勇気も大事。あるテレビ番組でジャックが、「メジャーの最終日のバックナインで、自分のなかで何か変えたことはあるか?」と聞かれて、「バックスイングの上げ方を6回も変えたことがあるよ」と答えていたんだ。偉大な人たちは、試合中でも修正をしていく。1打ごとに修正するというのはダメだけど、ある程度、同じミスを繰り返すのだったら、思い切ってちょっと変えてみるというのも必要。それで、いい方向につながることもある。もちろん、つながらないこともあるけれど、そうやってコース上でも修正するというのは、みんなやっていることだよ。

やっぱり、何をやってもうまくいく日というのは、そうそうない。逆に、まったくどうにもならないという日のほうが多い。そういうときは、コースマネージメントや自分の感性に頼って戦うしかないよね。

上田 では、自信を高めるには、どうすればいいんでしょうか。以前、カリー・ウェブさんとお話をする機会があって、彼女が言った言葉が印象に残っているんです。「ゴルフというスポーツは、自信をなくさせるスポーツだ」と。年齢を重ねると、自信を持ってできないことも多くなります。

ワトソン それにはやはり練習で、自分がやっていること、取り組んでいることが正しいということを確認しなければいけないね。練習では、ある一つのことを考えるとすべてがうまくいくという、いわば“カギ”みたいなものを探している。でも、それは長続きしなくて、まったく働かなくなることがある。そうなったら、また次は別のものを探しにいく。逆に、新しいカギを見つけたと思ったら、前にやっていたことが、また復活してきたりすることもある。そうやって練習を重ねて、毎日毎日、試行錯誤して、自分の自信を徐々にレベルアップさせていくしかないよね。

上田 自分も、トムさんと同じようなプロセスを踏んでいます。でも、それを続けても結果が出ないことはありますよね。そして、良くならないという結果がどんどん蓄積されていって、なかなか自信が持てなくなる。それでも諦めずに、同じ方法で、同じことを繰り返されてきたんですか。

ワトソン 私は、1985年から1994年の9年間、スランプになって、やっていることがすべてうまくいかなかった。ゴルフが嫌いになった。6週間、トーナメントに行かないこともあった。でも諦めずに、自分のカギを探し求めて、練習をたくさんしたり、自分を客観的に見て、「こういうふうに変えてみたらどうだ?」と、自問自答したりしていた。その9年間、ゴルフは自分の職業なのに稼げないし、自分のやっていることが全然うまくいかず、ずっとイライラしていて、もう嫌だというくらいだった。でも、ずっとやっていることを地道に繰り返すことによって、復活というか、いまに至っているよ。

昨日、アマチュアの人とラウンドをしたんだけど、最後の4ホールで3回くらい、試しにやったことがあって、3回目のものがうまくいった。けっこう、いいショットが出たんだ。明日もラウンドがあるけれど、試してみようと思っている。それくらい、調子が悪いときに何かを変えてみるというのは、やったほうがいいかもしれないね。

上田 たくさん経験もあって実績もあるのに、いまだにいろんなことを変えることに対しての抵抗がないんですね。ビックリしました。何かを変えるというのはすごく勇気がいることですから。今後の自分にも、生かしていけることだと思いました。

ワトソン みんな、良くなかったら変える。それはなんのためにやっているかといえば、100%の自信を持つため。ただ、自信が100%という時間は長続きしないから、その時間をエンジョイしてほしいね。