オデッセイ パター開発の舞台裏 「日本のプロの意見は欠かせない存在」

クラブをつくる過程において重要なものの一つが、プロからのフィードバック。彼らの声は、より良い製品をつくるための大きなヒントになる。実際、今春にはオデッセイからチーフデザイナーのオースティ・ローリンソンとグローバル・ストラテジー・ディレクターのクリス・コースキーが来日し、日本の男子ツアーでのリサーチを行った。果たして彼らはプレーヤーとの間で、どのようなやり取りをしているのか、また、日米の選手に何か違いを感じているのか。たくさんの興味深い話を2人から聞くことができた。
パター開発の裏側 「日本のプロの意見はいまや オデッセイには欠かせない存在」

 2人が日本ツアーにやってくるのは、もちろん今回が初めてではなく、2000年代終わりごろが最初だ。
「当時、アジア向けのパター開発がスタートしたことが、きっかけだった。日本のツアーからのフィードバックを受けたものをつくるというコンセプトで、それならば実際に日本ツアーでどんな形状が人気なのかなどを知りたいと思ったんだ」(ローリンソン)
 初めて見た日本ツアーでは、驚くことも多かったという。
「こんなにも多くの選手が、オデッセイのパターを使っていることにびっくりした(笑)。また、キャロウェイと契約している、していないに関わらず、みんなすごくオープンで、しかもしっかりとフィードバックをしてくれることにも驚いたね。パフォーマンスの良し悪し、転がり、打感、初速の速い遅いなど、すごく細かく答えてくれる」(ローリンソン)
 意外だが、アメリカでは思うようにリサーチが進まない部分がある。
「USPGAツアーでは、キャロウェイのプレーヤーが数人反応して、フィードバックしてくれればいいほうで、しかも、そのフィードバックも好きか嫌いかといったものが中心。日本ほど詳細ではない。だから、日本でフィードバックがすごく得られると言うことがわかったので、われわれの製品のリサーチをかけると同時に、今度はこちらから、こういうタイプはどうなんですか、といったように、新しい試作品を持っていってテストをしてもらうきっかけにもなった。日本でのやり取りがすごく開発につながっていて、日本がどんどん、プロトタイプをテストする場になってきている」(ローリンソン)

パター開発の裏側 「日本のプロの意見はいまや オデッセイには欠かせない存在」
オデッセイのチーフデザイナー オースティー・ローリンソン

 日本のプロの意見が、オデッセイにとっていまや大きな存在となっているというのはうれしい驚きだが、ではなぜ、日米のプロの対応に、これほどの違いが生まれるのか。そこには、両ツアーの環境が関係しているのではないかという。
「PGAツアーはやはり、世界中から選手が集まってきていてハイレベル。そのなかでシードを守っていかなければいけないということで、選手はけっこうナーバスだ。みんな、自分のゲーム、やっていることに集中したいし、それを邪魔されると嫌がる。一方で日本やヨーロッパのツアーでは、わりと選手同士の仲が良く、ラウンド後に一緒に食事に行ったりもする。そういったことが、フィードバックの差にも表れているのではないかと思う」(コースキー) 

パター開発の裏側 「日本のプロの意見はいまや オデッセイには欠かせない存在」
オデッセイのグローバル・ストラテジー・ディレクター クリス・コースキー

 違いは、それだけではない。パッティングやパターの好みも異なる部分があるそうだ。
「アメリカに比べると、日本ではマレットユーザーが多く、センターシャフトを使う選手がけっこう目につく。それには、ストロークの違いが関係していると思う。アメリカの選手の多くは、フォワードプレスをしてからテイクバックし、その手首の角度を変えずにフォローを出していくという打ち方。この場合、オフセットのないセンターシャフトだと、ロフトが見えなくなってしまう。でも、ブレード型ならフォワードプレスしてもロフトが少し見える。一方で日本の選手は、ニュートラルなポジションからバックスイングして、グリップがおへそを向いた状態のままフォローも出していくから、センターシャフトのパターも打ちやすいし、人気があるということなんじゃないかな。逆に、ブレード型でこの打ち方をすると、オフセットがあるのでひっかけやすい」(ローリンソン) パター開発の裏側 「日本のプロの意見はいまや オデッセイには欠かせない存在」

 一方で、もちろん共通点もある。パターの選び方だ。
「音や打感、転がりなど、いろいろ要素があるけれど、いちばんは見た目。構えたときの安心感や、もちろんカッコ良さというのもあるように思う。あとは、個々の選手によって好みは分かれると思うが、ポイントは、そのプレーヤーが何を求めているか。たとえば方向性がうまく取れないから、方向性がより取りやすいアライメント機能がついているパターを選ぶといったことだ。これらは、アメリカも日本も、共通のものがあるように思う」(ローリンソン)パター開発の裏側 「日本のプロの意見はいまや オデッセイには欠かせない存在」

 興味深いことに、プロの世界でもアマチュアのように流行があり、それも日本とアメリカで似ている部分だそうだ。
「パターのうまい選手が使っているものに影響を受けやすいところが、少しある。たとえばタイガー・ウッズが全盛期のときはブレード型をみんな使っていたし、最近ではパッティングのスタッツがトップランクだった選手がオデッセイの#7を使っているということで、すごく普及した。そういう傾向は、日本でもある」(コースキー)

Toe Upパターはミケルソンのリクエストがきっかけ

 フィードバックの話に戻そう。日本ツアーでの声を反映してできた実際の製品には、どんなものがあるのだろうか。
「たくさん(笑)。いちばん最初は、ホワイト・ホットの打感がまだすごく人気があったときに、ホワイト・アイス系の2層構造のプロトタイプを日本でテストし、フィードバックを得て、少し改良したものが世に出て行った。それが、ブラックシリーズのツアーデザインiXや、ホワイト・アイスiXだったりする。メタルXミルドも、オーバルテクスチャーのプロトタイプを日本に持ってきて選手に打ってもらったとき、打点のバラつきによって球の出方のフィーリングが違うという意見があったので、最終的にバックフェースに十字型のバーをつけて、それを解消した。いまオデッセイ・ワークスについているフュージョンRXインサートも、いろんな素材でメッシュをつくって日本でテストし、グローバルモデルのオデッセイ・ワークスより先に、日本向け製品のミルド・コレクションに入れた。昨年発売のミルド・コレクションSXも、サウンド・チャンバーのプロトタイプをいくつか日本に持っていって、音のテストをしてもらった。最終的なサウンド・チャンバーの構造に絞り込んでいったのは、日本のプロのフィードバックのおかげであり、その方向性はうまくいったよ。現行製品のホワイト・ホットRXも日本でテストし、フィードバックを受けて、少しだけ改良した末に、いまの製品になった。すごくいろんなやり取りをしたし、プロのフィードバックからすごく有効なものが得られているから、どのモデルも思い出深い」(ローリンソン)
パター開発の裏側 「日本のプロの意見はいまや オデッセイには欠かせない存在」

 一方で、今年4月から発売となった「Toe Upパター」は、じつはフィル・ミケルソンの意見が大きく反映されているそうだ。
「フィルとは、年に3~5回は直接会ってやり取りをする。彼はいろんな発想をするし、何かひらめいたら、こういうのをやってみたい、ああいうのをやってみたいと、けっこうリクエストしてくるんだ。昨年のザ・プレジデンツカップの前にも、じつはToe Upのバランスのパターを打ちたいと言われてつくったのだが、それがきっかけで今回のToe Upができた。パットの打ち方についても、かなり研究熱心。打ち方を変えたときには、こういう打ち方にしたいのでロフトを調整してくれ、ライ角を調整してくれ、といったリクエストが来る」(ローリンソン)
パター開発の裏側 「日本のプロの意見はいまや オデッセイには欠かせない存在」
 さて、2人の今年の来日でも、大きな収穫はあったのだろうか。そして、今回得られたアイデアは、いつ実際の製品となって店頭に並ぶことになるのか。
「今回ももちろん、すごくいいフィードバックをもらったし、それをアメリカに持ち帰って、いろいろやるべきことがたくさんあるし、今回の日本への出張も大成功だったと言える。今回のフィードバックを受けた製品は、まずは2017年に見ることができると思うよ」(コースキー)